学生時代から20年間、苦楽を共にしてきた私の愛車。 さすがに長年の疲れが出たのか、最近になって明らかなパワーダウンや気になる異音など、エンジンの不調を感じるようになりました。そこで思い切って、エンジンのオーバーホール(分解修理)を決意しました。

エンジンを開けてみると、心臓部であるシリンダーとピストンには激しい摩耗と縦傷が……。 これらを再生するため、専門の内燃機店へ「シリンダー・ボーリング(内径を削って整える加工)」を依頼することにしました。

この加工で最も問われるのは「精度」です。 シリンダーの内径と新しいピストンの直径との隙間(クリアランス)は、一般的に0.05mm。これはコピー用紙1枚分よりも薄い、極めて狭い範囲に設定されます。

私は仕事柄、日頃から「精度」や「品質」にはこだわりを持っていますが、金属の塊をミクロン単位で調整し、新品同様の性能へと蘇らせるこの職人技には、プロとして改めて感銘を受けました。
デジタル化が進む現代において、「失われつつある」とも言われるアナログな職人技術。今回の一連の体験を通じて、その尊さと凄みを肌で感じることができました。 そして何より、職人の手によって息を吹き返したエンジン音を聞き、愛車への愛着がこれまで以上に深まりました。
蘇った相棒と、これからも長く、元気に走り続けたいと思います。











